研究概要 |
東洋文庫所蔵の満洲語文献、とくに「廂紅旗档」(廂紅旗満洲都統衙門文書)は、中国・清代の八旗制度ならびに旗人社会を知る格好の資料であるが、残念ながらいまだ完全な整理がおこなわれていなかった。今回、本研究費補助金を受けて、研究補助者の助力を得て基本的な整理作業を実施した。整理作業をとおして、同文書はあわせて約2,400件もの数にのぼることがわかった。とくに、いままで全く調査の手がいれられていなかった18世紀以降の文書について、今回その全容をあきらかにすることが出来た。以下その概要を述べることにする。 「廂紅旗档」は大きく分けて(1)奏摺と付件、(2)奏摺号簿、(3)来文档、(4)行文档、(5)考勤単、(6)来文档号簿の6種類が存在する。雍正朝(1723-1735)から同治朝(1861-1875)までの档案のほとんどは廂紅旗都統から皇帝に上奏した「奏摺」である。ところが、光緒朝(1876-1908)以後になると、奏摺およびそれに付随するさまざまな文書があらわれる。それは、基本的に外部機関から廂紅旗衙門(廂紅旗の官署)に送られた文書と、それに対応するために同衙門で作成された文書類等である。この廂紅旗で作成された文書類を、その内容から分けると上記の(3)来文档、(4)行文档、(5)考勤単、(6)来文档号簿ということになる。 来文档は、外部機関から廂紅旗都統に送られてきた档案の原案、行文档は来文档で通達された案件を処理して関連の外部機関に送る文書の原案、考勤単は廂紅旗衙門の官員の出勤簿、来文档号簿は、来文档の受入台帳である。 現在、これらの文書の分類・整理をおこなっており、その目録化の作業をあわせて進めている。 また、2000年8月より9月にかけてには、ドイツ連邦共和国ベルリン市の国家図書館、ボン市のボン大学中央アジア講座図書室、フィンランド共和国のヘルシンキ大学図書館等において満洲語およびその関連資料の調査および現地研究者との研究交流を実施した。
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