今年度は、一昨年度、昨年度に引き続き東洋文庫所蔵の満洲語文献とくに「〓紅旗档」(〓紅旗満洲都統衙門档案)を中心とした中国・清代の満洲語文書資料を分類・整理した。現在は、昨年度英文で出版した「解題・目録篇」についで「研究篇」の執筆に入っている。また、8月にはヨーロッパにおける満洲語文献研究の中心のひとつであるベルリン国立図書館に赴き、清代の満洲語抄本と版本の調査・研究を実施した。とくにこの度見出した『紅楼夢』関係の抄本はほかにはみられぬ孤本であり、清代の満洲語関係資料としてきわめて貴重と考えられる。この作業と並行して、研究補助者の助力を得て、17世紀前半の満洲語資料である「内国史院档」の翻訳・整理を行った。今回実施した「内国史院档」の研究は、清の太宗ホンタイジの天聡七年分(「天聡七年档」)を中心として研究し、そのほとんどの逐語訳、意訳が完成した。本研究はまだその端緒についたばかりであるが、いまだ世界で試みられていないものであり、「実録」等のすでに公刊されている資料との対比をとおして、今後の清初史研究の進展にきわめて寄与するものと期待される。また、「内国史院档」の原資料と考えられるホンタイジ時代の資料「逃人档」の翻訳・研究も行った。
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