本研究は次のことを課題としている。即ち、(1)本報告者が過去10年以上に亘って収集した、第2次世界大戦期の日タイ関係に関する日本語、タイ語、中国語、英語の諸文献や一次資料および(2)本研究助成によって調査収集する第2次大戦期に出版された在タイ邦人経営の3新聞(タイ語紙の『カーオパープ』、中国語紙の『中原報』、日本語紙の『バンコク日報』)を資料として、1930年代後半から1945年における日タイ関係を政治、軍事、経済、金融、文化面などについて詳細に明らかにすることである。 両年に亘って、主として次の調査を実施した。一つは、タイ国立図書館での『カーオ・パープ』及び『中原報』の閲覧である。このため平成12年度の夏および年度末、平成13年の夏に、合計7週間タイ国に出張し調査を実施した。同図書館は両紙の閲覧は許可していたが、紙質の劣化が激しいので複写は禁止しており、また当面同図書館にはマイクロ化をはかる予定もなかったので、必要な部分を筆写する以外にはなかった。『中原報』については1941年から1945年部分を閲覧筆写し、『カーオ・パープ』については1941年部分を中心に筆写し、相当の成果を挙げることができた。また調査の第二として、現在までのところ公的な図書館での所在が確認されていない『バンコク日報』についても、古本屋等を通じて発見に努めたが、所在を確認するところまでには至らなかった。 研究成果としては、本報告者が従来までに収集した資料に上記新聞からの資料を加えて、「タイ国の立憲革命期における文化とナショナリズム」、「タイにおける共産主義運動と中国革命」、「タイにおける華僑・華人問題」の三論文(詳細は研究発表の項参照)を執筆、発表した。
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