本年度は、3年間にわたる本研究の最終年度にあたるため、これまでに蓄積された史料整理と分析を継続させるとともに、海外共同研究者イルハン・シャーヒン氏とともに本研究の最終成果としてまとめられる本の執筆準備にあたった。 具体的な史料としては、平成12年度に『資産台帳』(イスタンブル総理府古文書局所蔵)を、平成13年度には『イスラム法廷文書』(アンカラ国立図書館所蔵)を閲読・分析し、本年度は引き続き『イスラム法廷文書』および『オスマン帝国官報』(財団法人東洋文庫所蔵)の閲読・分析をおこなった。ただし、主としてイスタンブル総理府古文書局に所蔵されているヤージュ・ベディルに関するオスマン時代の史料は、すべて閲覧できたわけではなく、今後もこのような史料閲読作業を継続していく必要がある。 海外共同研究者イルハン・シャーヒン氏が来日した6月には、上記の執筆作業を集中的に共同でおこなうとともに、これまでの研究成果を、京都では6月16日に日本トルコ文化協会において、東京では6月21日に東京外国語大学本郷サテライトにおいて発表し、日本のトルコ研究者から貴重なアドバイスをいただく機会となった。 さらに本年度は海外共同研究者イルハン・シャーヒン氏とともに、8月下旬に現地調査もおこなった。具体的には平成13年度におこなった現地調査に基づいて、平成13年度に訪問したヤージュ・ベディル遊牧民出身者が定住したバルケスィル郡周辺村に加えて、別の地域に帰属する新しい村村を訪問し、聞き取りを行った。とりわけ、エーゲ海沿岸部に隣接したイズミル県ベルガマ郡に帰属する村では、遊牧民たちの墓石を読むことによって、19世紀の史料を裏付ける情報が収集され、大きな成果が得られた。以上の現地調査から得られた情報と史料から得られた情報とを照合、分析し、本研究の成果を取りまとめる作業を鋭意おこなっている。
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