本年度は、3年間にわたる本研究の最終年度にあたるため、これまでに蓄積された史料整理と分析を継続させるとともに、海外共同研究者イルハン・シャーヒン氏とともに本研究の最終成果としてまとめられる本の執筆準備にあたった。 オスマン朝史料に関していえば、平成12年度に『資産台帳』(イスタンブル総理府古文書局所蔵)を、平成13年度に『イスラム法廷文書』(アンカラ国立図書館所蔵)を閲読・分析し、本年度は引き続き『イスラム法廷文書』および『オスマン帝国官報』(財団法人東洋文庫所蔵)の閲読・分析をおこなった。ただし、主としてイスタンブル総理府古文書局に所蔵されているヤージュ・ベディルに関するオスマン時代の財政関連史料は、すべて閲覧できたわけではなく、今後もこのような史料閲読作業を継続していく必要がある。 現地調査は、平成13年度および平成14年度に海外共同研究者イルハン・シャーヒン氏とともにおこなわれ、定住してもなおじゅうたん製造や生活様式等遊牧文化を継承しているヤージュ・ベディル出身者たちと交流することができた。彼らは主として今日の西北アナトリアのバルケスィル県ビガディチ郡およびスンドゥルグ郡の村村に定住しているが、一部は同県ケプスト郡やイズミル県ベルガマ郡にも定住していることが確認された。現地調査による聞き取りから、19世紀の史料を裏付ける情報が収集され、記述史料と語り伝えられる歴史との比較検討によって大きな収穫が得られた。 本研究の成果の一部は、すでに平成13年に東洋史研究会で口頭発表され、平成14年には『日本中東学会年報』17-1号で論文として発表された。平成14年にイルハン・シャーヒン氏が来日した6月には、上記の執筆作業を集中的に共同でおこなうとともに、これまでの研究成果を、京都の日本トルコ文化協会および東京外国語大学本郷サテライトにおいて発表し、日本のトルコ研究者から貴重なアドバイスをいただく機会となった。 以上述べてきた研究の最終的成果として、目下、共同で著書を鋭意準備している。
|