(1)李開元「前漢王朝主要官僚類型表」と「前漢王朝における主流社会の転換について」は、前漢王朝における官僚層の分析研究に関する基本データに基づいて、各官僚集団の興衰変化について追跡的考察をおこない、その結果を通して前漢200年間の政局、政治文化、支配階層および主流社会の変換に関する全体像を描写することにした。その結果によって、前漢王朝において、その政治と主流社会を導いて支えているのは、軍吏(軍層を含む)、法吏、儒吏および宗親という四大官僚集団であると分かった。さらに四大官僚集団の興亡離合のプロセスを通してみると、前漢王朝における二つの重要な変化が現れてくる。それは、1、尚功型政治と社会から尚法型政治と社会への転換、2、尚法型政治と社会から尚儒型政治と社会への転換ということである。 (2)梅原郁「酷吏伝の諸相」は、漢代に始まった法吏の一類型、いわゆる酷吏について文献分析を通して検討したものである。氏は、前近代中国の法制の流れの中で、漢代から唐代までの酷吏を考察し、『史記』の酷吏と漢代以後の酷吏の間に、かなり大きな差異が潜んでいる点を明らかにした。つまり、歴代の酷吏は、おのおのその時代の「吏治」を色濃く反映し、そこに「酷吏伝」の作者個人の史観と感情が複雑に絡み合ったものではないだろうということである。
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