研究概要 |
今年度はポンペイ以外のイタリア地方都市および、より大きな比較を目指し、イタリアとは異なる属州都市についての現在までの研究状況を調査した。属州とイタリアの行政面での差異は属州総督の有無であった。イタリア都市は直接、ローマの共和政時代からの政務官の支配下にあり、その政務官の上に元老院と皇帝がいる構図だった。総じてイタリア都市へのローマの介入は少なく、有るとすれば元老院がその主体だったが、おおむねイタリア各都市の自治に都市行政はゆだねられていた。都市自治の担い手は、共和政期のローマのように、市民の参加する民会、都市有力者の集まりである市参事会、それに都市の行政と担当する一年任期の都市政務官であった。このような都市ローマに似た都市の外観および都市行政組織は同盟市戦争(前90年-前88年)後、徐々に、まずイタリアに、それから属州に定着したものである。ローマ共和政末期から元首政期はイタリア地方都市にとっては、中央ローマのような都市外観を得ようとした建築ブームの時期であったと言えよう。ところで、中央ローマの皇帝とイタリア地方都市の人的つながりについてであるが、皇帝は名誉職としてある都市の保護者あるいは都市政務官に就くことはあるが,これは形式的なもので、実質的にその都市が他の都市より政治的に優遇された例はあまり見受けられない。元首政期のイタリア都市はローマの平和(PAX ROMANA)の下、ローマとは距離をおいて、各都市が積極的に都市の建築にせいをだしている様子がうかがえる。
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