今年度は三年間にわたる研究のまとめの年として、今までに収集した研究文献課題関連文献の整理を行ない、従来の騎士団研究の到達点を明らかにすることに努め、その結果を「中世スペインにおける騎士団に関する研究動向(カスティーリャ・レオン王国)」としてまとめ、研究成果報告書の一部とした。 騎士団研究の諸分野として、まず騎士団という組織を総体的に対象としたもの、個別の諸騎士団を対象としたものが挙げられる。これらの研究は、騎士団の創設から解体までの時期全体を対象にしている場合が多い。次に時代を限定して、騎士団の諸側面を対象にした研究がある。これらはその諸側面にしたがって、政治史的研究、伝記的研究、制度史的研究などに分類できる。 その中でも騎士団の所領を対象にした研究(これは社会経済史的研究といえよう)は、もっとも研究の蓄積が多い分野である。中世スペインの所領は、王領、貴族所領、教会所領(教会、修道院、騎士団>と分類できるが、騎士団の所領はとりわけ南部の地方において広大な領域を占めており、その研究が重要であることが、このように盛んに騎士団領研究がなされている所以であろう。 この他に、騎士団の内部構造、広い意味での教会組織である騎士団と一般の教会との関係、騎士団の宗教組織としての性格、騎士団の規則などさまざまな問題に関して研究がなされてきていることが判明した。 今後はこうした状況を踏まえ、さらに詳しく個々の分野について研究を深めていきたい。
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