治療者・患者関係を明らかにする上で、治療の現場での個々の治療者・患者関係を分析するミクロヒストリーが重要な方法であると考え、その具体的な方法を模索してきた。しかし、現実には、個々の治療現場の雰囲気を伝える史料の数はきわめて少なく、得られたわずかな史料における個々の事例の偏差が大きかったため、その時代を的確に捉えることが困難であるということがわかった。 そこで、発想を転換し、患者側が治療者に対してどのような要求を突きつけてきたのかを、患者団体と治療者団体との関係から読み解くことにした。本年の研究は、自然療法を信奉する患者団体が、自然療法治療者の資格基準、養成方法などに関して、どのような要求を出したかなどを、自然療法信奉者団体および自然療法治療者団体の各種機関誌を中心に分析してゆくことにした。さらに、比較として、ホメオパティー治療における医師資格が整備されてゆく過程を分析した。 その結果、自然療法においては自然療法士資格の創設と、その養成課程の確立にあたって、患者団体がイニシアティブを握っていたのに対して、ホメオパティー治療においては、患者団体の発言はほとんど医師側には顧みられず、ホメオパティー医資格は、正統医学の医師との妥協点をさぐりながら、ホメオパティー医のイニシアティブで整備されてきたことが明らかになってきた。 研究成果は、別表の2論文で公表したが、ホメオパティー医資格に関しては、改めて独立した論文で論ずる予定である。
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