本研究は、ナチス時代(1933-45年)に、女性の大学教育と大学卒専門職活動がどのように展開されていたかを社会史的に考察することを目的としているが、本年度はまず、当該部分に関して量的にも質的にも最も顕著な活動を展開した女子医学生、女性医師について研究を進めた。 1.その結果以下のことがわかった。 (1)ナチス政権成立前のヴァイマル時代に、全学生の2割を占めていた女子学生のなかで医学専攻は3割弱に達し、そのなかでもユダヤ教徒女子学生にその傾向が強かった。 (2)ナチス政権は、ユダヤ教徒と女子の大学入学を抑制したので、ユダヤ教徒学生は男女ともに皆無に近づくが、女子学生は、第二次世界大戦開始とともに増加に転じ、全女子学生のなかで医学専攻は5割を占めた。 (3)ヴァイマル時代に、女性医師は女性医師同盟という職業団体を創って、とくに社会衛生分野で多様な活動を展開した。 (4)ナチス政権は、ユダヤ教徒・女性医師に対する抑圧・排除政策を強めたが、開戦後女性医師は増加に転じた。しかし開業医としての道には制約があり、女性医師はナチス諸団体の勤務医として働き、ナチス体制を支えた。 2.以上の成果を2000年11月25-26日の大学史研究会第23回研究セミナーにおいて報告した。 3.平成13年度は、女性医師については、さらに一次史料を読み進めて具体的内容の検討を進めるとともに他の専門職についても研究を進めて、ナチス政権下の女子学生、女性専門職について、ナチズム研究、ジェンダー研究の成果を吸収して、歴史的社会的位置を考察する。
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