2年目にあたる本年度の研究は、つぎの3点に集約できる。まず第1に、カナダで、しかもイギリス帝国で、最初の「帝国記念日」となった1899年の祝典内容を、前年度から実施してきたオンタリオ州に加えて、ケベック州やマニトバ州などについても、新聞史料を中心に分析検討した。とくにケベック州でのイギリス系カナダ人とフランス系カナダ人の「帝国記念日」への対応の違いを読み取ることができ、両者のイギリス帝国統治に対する受容の差異を析出することができた。 第2として、オンタリオ州における「帝国記念日」の推移を、1899年から20世紀後半まで考察を試みた。これについては、前年度から引き続きの検討事項であり、本年度は、第1次大戦期まで、オンタリオ州教育省が発行した教師向けのブックレットを中心に考察をした。最終年度にあたる次年度は、この分析を20世紀後半まで行い、カナダの国民統合におけるイギリス帝国のプレゼンスの意義とその変容について、さらに考察を深めたい。 また第3として、カナダ史研究におけるイギリス帝国史的アプローチの意義について、従来の研究成果を批判的に検討しながら考察し、「帝国記念日」に関する実証的研究を、カナダ史およびイギリス帝国史研究の中に位置づけることを試みた。本考察については、2001年9月にトロント大学のカナダ史研究者と意見交換したばかりか、ウェスタン・オンタリオ大学歴史学部にて講演する機会を得、大いに収穫を得た。
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