本研究は、(1)比較的史料の多い前2千年記に重点を置いて、神・人間のコミュニケーション・チャネルである各種の占い、夢、預言などについての言及例を文書史料から収集し、(2)各種コミュニケーション・チャネルの比較をすると同時に、(3)果して、人間は神々の恣意の奴隷であることに満足していたのかについても、いわゆる智恵文学などに照らして検討し、(4)古代メソポタミア人のメンタリティを解明することを目的とした。 初年度は、資料収集が中心となったが、研究成果の一部はシュメール研究会で「マリ出土の占師のためのプロトコル」と題して口頭報告した。同プロトコルは、マリ王が占師達に対して報告義務・守秘義務を誓約させた誓約文で類例がない。詳細については「研究成果報告書」の43-57頁以下を参照。この研究は上記研究目的の(1)に関連。 第2年度は、資料収集に加えて関連文書の分析を進め、その成果の一部をシュメール研究会で「北シリアとディヤラ地域-キティートゥム女神の神託との関連で-」と題して口頭報告した。バグダードの東に位置する都市遺跡から預言文書が出土したことにより、預言現象が西セム世界に限られるとする通説との整合性が問題となった。詳細は「研究成果報告書」の25-42頁を参照。この研究は上記研究目的の(1)と(4)に関連。 第3年度(最終年度)は、上記研究目的の全体にわたって研究を進めることが出来た。成果の一部は「内臓占い」「神託」「夢占い」「夢」「預言」「預言者」「守護神」「ヨブ記」「新年祭」「川の神」として日本オリエント学会編『古代オリエント事典』(岩波書店・平成16年刊行予定)に収録、刊行予定。さらにマリの預言および預言と占いの関係を論じた研究論文については、「研究成果報告書」の1-24頁を参照。
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