一昨年度・昨年度に引き続き、シドニウス・アポリナーリスの詩歌集・書簡集の読み直しを深めると同時に、シドニウスの5通の書簡の受取人であるマルセイユ司教グラエクス、同じく2通の書簡の受取人で詩歌1篇も献じられているリエ司教ファウストゥス、5通の書簡を受け取っているマグヌス・フェリクスといった人物の間で交わされた、シドニウス以外の書簡の検討を進めた。また、シドニウスの年下の友人にして485年頃に西ゴート王国圏内のリモージュ司教となったルリキウスは、シドニウスから祝婚歌を献じられ、3通の書簡を受け取り、自らもシドニウス宛に2通の書簡、リエ司教ファウストウス宛に2通の書簡をしたためている他、シドニウスと共通の知人・友人も多い人物である。従って、彼の書簡集からはシドニウスと同時期、およびそれに続く西ゴート支配下ガリアにおけるセナトール貴族層やガリア教会の動向について、貴重な知見が得られると期待でき、それゆえに近年Ralph Mathisenによってもその史料的価値が再評価されている。今年度はそのルリキウスの書簡の読解も行った。
|