本研究は20世紀のドイツ共産主義運動を、1)ヴァイマル共和国時代からドイツ民主共和国時代に至るまでの長い射程(1918-1990)と、2)女性解放との関連という視角、から捉えようとするところに特色がある。このような特色に照らして、2000年度はa)ドイツ共産党関係史料、b)ドイツ民主共和国関連文献の収集に、研究活動の重点を置いた。a)については、ドイツ連邦共和国ブランデンブルク州州立公文書館において、ヴァイマル共和国時代末期のドイツ共産党の地域レヴェルでの活動実体、また運動への参加者の社会的基盤を明らかにしうるような史料を閲覧した。そこで得られた最も重要な知見は、地域レヴェルでの活動は党のイデオロギーによるよりも、参加者の生活上の直接的な必要によってつき動かされているということであった。b)については、ドイツ民主共和国における女性の社会史を中心に、可能な限り広範な文献収集を行った。とりわけ女性の就労行動に関する最近の研究文献から、本研究における申請者の視点がドイツ内部に限定されすぎていること、すなわちドイツ民主共和国における女性の就労行動と家事労働との関係は、歴史的に観れば、19世紀の西ヨーロッパにおける産業革命期や20世紀のスカンディナヴィア諸国などと比較することで、その特色が明らかになるのではないか、と考えるようになった。 なお、本研究に至るまでの間にすすめてきた戦後ドイツ史と、ドイツ民主共和国の女性史に関する研究の成果を、2000年春に発表した(研究発表欄参照)。
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