本年度は研究の基本的方向性を定めるため、申請時より抱いていたこの研究テーマに基づき、「もう一つのポリス世界-脱アテナイ中心主義の試み-」と題して大阪外国語大学における第50回西洋史学会にて報告を行った。そこにおいてポリスの統合性に着目する重要性を認識し、研究対象であるアルカディア地方の諸ポリスについてはもとより、広くギリシア全土におけるポリスの例を考察する必要を感じ、年度末にはロンドンにある古典学研究所の図書館でそれに関する史料、研究文献の収集を行い、来年度以降の研究に備えた。 また研究を進めるための基本的な器材であるパーソナルコンピューター式とデジタルカメラを購入し、インターネットによる情報収集と器材の扱いの習熟に励み、次年度から二年間に渡って実施するギリシアでの現地調査の準備を行った。またロンドンの古典学研究所の図書館における資料収集の際、調査を効率よく行えるように現地の発掘報告を調べた。 これらの資料収集に加え、史料集を購入し、対象地域の状況を分析する作業を開始し、同時にこの研究の一つの特徴である通時的視点の面からローマによる支配期のギリシアに関する諸業績を摂取し、年度後半にはローマがいかにギリシアに進出し、そこを支配したのかを考察し、ポリスがおかれた状況を分析した。その一つの成果として、ローマの対外進出・支配をいかに研究されてきたのかを今後の方向性とともに学界動向としてまとめ来年度はじめには『軍事史学』にて公刊される予定である。 以上のように本年は来年度以降の本格的な研究活動の準備が主であった。
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