本年度は昨年度末にロンドンで収集した文献と、購入した史料・文献の講読・分析に大半の時間を費やし、年度末に実施したギリシアにおける調査の準備を行った。主として19世紀後半から20世紀初頭にかけて欧米の研究者が行った調査の報告書を読み、現地の状況を把握することに努めた。またここ10年の間に盛んになってきたアルカディア研究の諸著作を講読することで最新の研究状況の理解を進めた。 上記の作業を通じて、「アルカディア地域のポリスの実態を探る上で、隣接する諸地域の事例との比較が不可欠であることを痛感して、本年度は近年の研究の進展が著しいスパルタの研究にも目も向けた。その成果として2001年9月6日に専修大学で開催された西洋古代史サマーセミナーにて「近年のスパルタ研究」と題する報告を行った。ここでスパルタに支配されたとする諸地域のコミュニティのあり方はアルカディアに存在した諸地域の状況を理解するために有益であることが明らかになり、これらスパルタ内の諸コミュニティの研究も同時に進めることとした。 以上の準備を行って、3月7日より海外調査を実施した。まず2日間ロンドンにある古典学研究所の図書館において最終的な文献のチェックを行い、その後アテネを経由してペロポネソスに入り、アルカディア・ラコニア・メッセニア諸地域のコミュニティの存在したロケーションの把握を中心に1800kmに及ぶ移動距離をかけて現地踏査を実施した。 このように13年度は本研究の主要な作業である現地踏査の準備とその実施が主たる活動であった。しかし本年度の踏査のみではまだ多くの地域の調査がなされておらず、また本年度の経験から調査には改善の余地が多々あることを痛感したため、来年度の調査に課題が残されることになった。
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