縄文時代の環境復元と生業に関する研究に際して、1年目である平成12年度は、基礎的データの集成に重点をおいて研究を行った。 本年度実施した研究の第1点は小規模な発掘調査である。津島岡大遺跡の中で縄文時代の遺構密度が高い範囲内に、6ヵ所の試掘坑を設定して調査した。個々の地点は約3m四方の限られた面積であったが、土層堆積状況から縄文時代の地形を復元するためデータを蓄積することができた。 2点目は、6ヵ所の試掘坑に縄文時代の水辺遺構を検出した発掘調査地点を加えて行った土壌分析である。それぞれの中で分析に有効と考えられる地点・土層において、プラントオパール分析のほか花粉分析、土層の年代測定など幅広い分析を実施することができた。その結果、縄文時代後期においては、稲栽培の痕跡を確認することはできなかったが、当地域で特徴的な「黒色土」が水田耕土であることが科学的分析からも確認された。本土層は、従来の発掘成果を考えると、突帯文〜弥生時代前期と位置付けられているが、その段階において広範囲に水田開発が進んでいたことが想定され、縄文時代後期との生業面での差を確認することができた。また、植生・環境の復元においても成果が上がっている。土層の年代に関しては、縄文後期縁帯文の土器を包含する土層にBC1900年前後に数値が得られた。また、前述した「黒色土」の時期に関してはデータの蓄積が進み、堆積時期が縄文時代後期にさかのぼる可能性も認められ、従来の知見を再検討することも視野に入れて、土層の性格を考える上で重要なデータとなった。 種子と石器のデータベース化に関しては、岡山県下の資料をほぼ集成することができ、来年度の研究に向けての基礎作業を進めることができた。
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