研究概要 |
本研究は東四国地方に築かれた前方後円墳を素材が前方後円墳自体の成立にあたって初現的な様相を示し、本地域で醸成された要素がその後近畿地方をはじめとする各地へと影響を与えたとの仮説の補強と、この点を、特に徳島県域における資料的な裏付けを得ることを目的とした。この目的を達成するために、徳島県域所在の前方後円墳や円墳、積石塚古墳の実地調査を行い、地形測量や埋葬施設の実測を行った。また徳島県域と特に関係が深い地域のひとつである兵庫県域所在前方後円墳をも実地調査に加えた。調査成果にもとづき、墳丘形態・埋葬施設の方位観と墳丘主軸との関係・埋葬施設の構造や規模の3項目にかんする検討を実施し、本地域の特性と、他地域との関係を把握した。判明した所見は以下に列挙するとおりである。 1,墳丘形態 本地域では平面規格の類型化を実施した場合、5形態に区分できる。このうち2形態については、本地域と兵庫県域で醸成され、前方後円墳築造規格の1類型となった可能性が指摘できる。そのいっぽう他の3形態については、近畿地方からの波及である可能性が高い。ふたつの系統の混在状況である。 2,埋葬施設と墳丘主軸 本地域は埋葬施設東西主軸優位地域といわれてきたが、上記の混在状態を反映して同じ東四国でも香川県域とは異なった様相を示す。もちろん畿内中枢地域とも異なり、全体として兵庫県西部との類似性が高い。 3,埋葬施設の構造と規模 本地域は竪穴式石槨が広範囲に普及した地域として特徴的な様相を示すが、規模には大小3類型の存在が指摘でき、地域内部の秩序の存在が推定できた。 以上の所見を勘案した結果、代表研究者の提示した作業仮説「讃岐型前方後円墳」概念には、香川県域、徳島-兵庫に分けて再整理する必要性を認識するに至った。
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