本年度実施した予備調査は、北海道と東北を関係づけることができ、北海道への伝播に関連ある地域、具体的な証拠がえられる可能性がある地域を選定した。東北地方での鉄関連遺構が出土した遺跡も探査した。 東北地方で新たに発見され竪型炉は青森埋蔵で発掘している朝日山遺跡と岩手県山田町の後藤遺跡で確認され実見した。また東町の明美遺跡も興味ある鉄製品が発見され、発掘が必要な遺跡と考える。 北海道では擦文時代の集落趾が海岸沿いに分布する状況から、海岸部から上陸して内陸部に浸入していくような状況を考え、上陸しやすいような立地をそなえた十勝の太平洋側の南部海岸沿いの地域に注目し探査した。現在の十勝川河口の十勝太若月遺跡からはすでに擦文時代住居趾から鍛冶炉に使用される羽口が見つかっている。しかし十勝の南部太平洋海岸地域はあまり調査がおこなわれていない。そこで太平洋海岸南部沿いの地域で、また立地条件が適当と思われる大樹町のホロカヤント遺跡群に焦点を定め、現地で予備調査を行った。当該遺跡群は6ケ所の擦文時代の竪穴住居群があり、総面積約17000m2ある。竪穴数だけでも推定150くらいはあるとされている。このうちの1ケ所である十勝ホロカヤント-竪穴群は昭和37年に8日間の簡単な発掘調査が行われているが詳細がよくわからない。このため現況を確認調査し、4軒の発掘された竪穴を確認した。その他の竪穴でも盗掘が行われた可能性が見受けられた。さらに残り5ケ所の包蔵地として記載されている晩成1、晩成2、晩成3各遺跡の確認調査をおこなった。晩成2遺跡については、竪穴1軒近辺に擦文土器片が散在し表採を行った。黒曜石製の剥片も採集した。時期としては複合している可能性がある。来年度はこのホロカヤント遺跡群を発掘調査し、具体的な証拠をえたいと考える。さらに浜大樹1、浜大樹2遺跡を調査したが、確認できなかったので再確認調査の必要がある。
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