本年度は昨年の基礎的データ収集から一歩進んで、そこから得られた「仮説」を実地に即して検証することに意を注いだ。このため、近年朝鮮半島(中でも金海を中心とする朝鮮半島南端部の加耶地域)系文物の出土が相次いでいる北信濃(例えば渦巻文装飾付鉄剣が出土した長野県木島平村根塚遺跡や馬形帯鉤を出土した長野市浅川端遺跡などがある)に赴いて現地視察の上、遺物を実見して検討を行った(土生田のほか、酒井清治、右島和夫、高久健二の各氏が参加)。この見学に当たっては長野県考古学会古墳部会との共催という形で研究会をも催し、同部会所属の地元研究者と活発な意見交換を行っている。その際、この方面に詳しい京都大学・吉井秀夫氏にも現地に赴いていただき意見を伺った。 このほか、昨年に引き続き東日本出土半島系文物の整理と分析を行っている。なかでも福尾正彦・徳田誠志両氏には甲胄及び金属器製作技法(福尾)と金銅製装身具(徳田)の分析を依頼した。土器については酒井が九州に赴き東日本と半島系土器受容における様相の異同について検討したほか、土生田も対馬・壱岐等に出張して古墳構造等について同様の観点から検討している。また特に土生田と酒井は韓国に出張して、各々の視点に基づき東日本出土半島系文物の源流の状況を観察・考察している。このような我々の研究は未だ研究途上であり、来年度末の総括において結実させるよう鋭意努力しているが、研究成果の一部分は土生田・酒井が日本、韓国の研究会において発表している(本書類の11項参照)。
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