本年度は本研究費の最終年に当たるため、これまでの2カ年を含む研究実績のとりまとめを中心課題に据えた。このため、研究分担者や協力者の執筆に向けて、数回の会合を持つことにより各々の見解の類似点や相違点を把握した上で、それらの要因について討議した。その結果、これまでに考えられていたよりも、東国において朝鮮半島を中心とする渡来系文化の流入がはるかに多いこと。また単に文化の流入にとどまらず、場合によっては渡来人そのものの移住も視座に据える必要のあることなどを確認した。その上で、それらが在来系文化の中に消化・変容されていく過程の分析こそが最も重要であるとの共通認識を持つに至った。本研究費の報告書において分担者・協力者各位、によって書かれた論文はこうしたコンセプトのもとに執筆したものである。 また東国古墳時代の渡来系文化という場合、対象地域としては大半が北関東地方でとどまっていたが、近年東北南部にもそうした渡来系文化の片鱗が報告されることがあるため、平成14年の10月、宮城県考古学会とも協力して、宮城・福島両県における渡来系文化との関連が疑われる遺跡・遺物を見学した。その際こうした方面に造詣の深い岡山理科大学の亀田氏や地元の研究者にも参加していただいて討議・検討を行った。その成果の一部は、上述した本研究の報告書に亀田・高橋両氏の論文として掲載されている。 これらの総合的なまとめと古墳時代全体の中における位置づけについては引き続いて研究を深める必要があるが、現状での予察を報告書の中で土生田・右島によって行っておいた。
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