高い技術的専門性が要求される形象埴輪を樹立する古墳は、古墳時代前半期に近畿地方から各地方に急速に拡大したが、その背景には埴輪工人(製作技術者)の派遣を伴う埴輪生産を想定することができる。このような古墳は古墳時代中期に関わる前期末(4世紀後半〜末)頃と中期中(5世紀前半〜中)頃、および中期末(5世紀後半〜末)頃に集中している。 研究期間の3ヶ年で、各地方で形象埴輪を樹立する当該期の主要古墳出土資料の調査を実施した。調査対象は福岡県沖出古墳・鋤先古墳、熊本県向野田古墳・天水小塚古墳、大分県亀塚古墳・御陵古墳、山口県柳井茶臼山古墳、広島県三ッ城古墳・三玉大塚古墳、岡山県天狗山古墳・金蔵山古墳・西山古墳群、愛媛県鶴ヶ峠古墳群・妙見山古墳、大阪府五手冶古墳、奈良県室宮山古墳・石見遺跡、和歌山県車駕之古址古墳、京都府私市円山古墳、滋賀県野洲大塚山古墳、岐阜県昼飯大塚古墳、三重県宝塚1号墳、長野県倉科将軍塚古墳・天神山1号墳、山形県菅沢2号墳、岩手県角塚古墳出土埴輪などである。調査に際しては、福岡・熊本・大分・山口・広島・岡山・愛媛・大坂・京都・奈良・和歌山・滋賀・岐阜・三重・静岡・長野・群馬・山形・岩手の各府県在住の古墳研究者を研究協力者として依頼し、実測・撮影などの資料調査を行ったほか、関連資料の調査および文献収集も実施した。また、各地方で研究協力者と埴輪生産の技術交流と古墳文化の伝播をテーマとした研究会を実施し、当該期首長層の古墳築造に関する技術交流からみた政治的関係について検討した。 このほか、大学院生を研究補助として、写真・図面などの調査資料と文献資料の整理を進め、東京国立博物館蔵の宮崎県西都原古墳群、群馬県赤堀茶臼山古墳・奈良県石見遺跡出土資料などの接合・分類と実測も実施した。
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