平成12年度は、まず、郡衙正倉および古代豪族居宅関係遺跡について、調査報告書掲載の総柱高床倉庫遺構のデータを収集し、データベースを作成する作業を開始した。データ項目は、平面形式、桁行・梁行総長・柱間寸法、平面積、柱掘りかた形状・規模、年代、などである。これまでに関係遺跡の2割ほどの入力作業を終了した。そして、とくに柱穴の形状に留意した土木工法の類型区分の作業を始めている。この土木工法うち、四隅の柱掘りかたが斜め45度方向を示す建物や、布掘り掘りかたを示す建物など特徴的な工法をとるものについてみると、前者は、8世紀後半以降に顕著に現れると考えていたが、7世紀後半段階から出現していることが判明した。後者は溝持ち掘りかたなどとも言われ、板壁構造を示すものとして若干論及されている形状のものである。この掘りかたは古墳時代以来の土木工法を受け継いだものとみられるが、建築の基礎構造との関係については、板壁・地覆・地中梁の据え付け掘りかた、柱底面に歩み板状の礎板を据えるための掘りかた、独立柱の掘りかたを連結して掘ったもの、など多様であり、これらの峻別が大きな問題となることが確認された。これらの識別は、倉下利用との関係でも重要な意味を持ってくる。今後、これらの分布や建物規模との関係などに注目して整理を進める予定である。 収集した資料のうち主要な正倉院の遺構図については、「主要郡衙正倉遺構図集成」として『郡衙正倉の成立と変遷』(奈良国立文化財研究所発行)に掲載した。 また、今年度は、正税帳などの文献史料や木簡から穎穀収納倉庫の具体的な規模・構造などのわかるデータを収集する作業を進めた。そして、その一部は「郡衙正倉関係史料集」として『郡衙正倉の成立と変遷』(奈良国立文化財研究所発行)に公表した。
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