平成13年度は、郡衙および郡衙関連遺跡、郷関係官衙遺跡、古代豪族居宅遺跡などの発掘調査成果から、総柱式高床倉庫遺構について資料収集をおこない、データベースを作成する作業を継続した。データ項目は、平面形式、桁行・梁行総長・柱間寸法、平面積、柱掘りかた形状・規模、年代、などで、これまでに関係遺跡の6割ほどの入力作業を終了した。それと併行して、『平安遺文』などにみえる倉庫関係史料の収集をおこなった。また、今年度は、天平諸国正税帳や越中国官倉納穀交替記などにみえる正倉資料の規模と収納量との関係を整理・分析し、穀倉・穎倉・穎屋における規模や収納量の違いについて明らかにし、それと収集した正倉遺構との対比を進めた。 その結果、桁行・梁行寸法によって穀倉・穎倉の識別がある程度可能な部分があること、不動倉を中心とする穀倉の規模にも国郡の地域差が認められること、小規模な正倉群タイプについては、豪族居宅や集落にみられる倉との共通性が顕著であり、それらの倉が移築されたりして正倉とされた可能性があること、郡稲倉は小規模正倉群タイプに属しており、郡司の私倉が利用されたとする説が十分検討に値すること、屋については島根県後谷V遺跡のように穎稲を貯積したとみられる特殊な例もあるが、主に穎屋として利用されており、しかもその屋の多くは平面積70m^2以上の大型のものであり、穎倉と併行して穎稲多量収納施設として8世紀後半以降重要な部分を占めるようになったこと、などが判明した。今後、小規模な正倉とくに穎倉と居宅・集落の倉との遺跡における識別法などが課題となる。
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