最終年度の本年は、研究の各項目ごとに主に最終的な成果を出すためのまとめを行った。その結果、3年間の研究成果は以下のようなものとなった。 (1)データベース作成のためのツールの開発 用語索引の作成とそのデータベース化は手間のかかる作業である。できるだけ簡略化し、短時間で作成・利用するために、既製のデータベース・ソフトと組み合わせてwindows上で使用できる用語索引作成ツール「KWCIV」を作成した。KWCIVはVBA上で使用することができ、作成した用語所在索引、用例付き用語索引、KWlCともにテキストファイルに変換し、使用できる。 (2)用語索引の作成 台湾総督府編纂の国語読本のうち、第I期については見出し語をつけ、用語索引として公表できる形式を整えた。第II期から第V期については、KWC形式での出力を行った。国立国語研究所作成の「国定読本』と単位をほぼ同じにすることにより、厳密な比較研究が可能になった。 (3)台湾総督府編纂国語読本の国語学的研究 (1)成立期および成立過程から考えられる国語学上の諸問題について とくに第1期は内地での「標準語」成立期に当たり、内地での学会内の動向や植民地政策上の方針を含めて同国語読本の言語史上の地位について考察した。 (2)内地国語読本と台湾総督府編纂国語読本の国語学的比較研究 内地での国語読本との比較をすることにより、台湾総督府国語読本の用語に関する国語学的分析を行った。その結果、第I期は「国定読本』との差がもっとも大きく、さらに内地での第I期『国定読本』よりもいわゆる標準語に近いことが明らかになった。
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