本年度は、モンゴル語の文法の分析に重点をおいた。モンゴル語の文法は日本語の文法に似ており、できれば、日本語と同じような分類によって、文法記述を行いたいというのが、本研究の初めからのもくろみである。従って、とくに日本語や満州語などの文法との比較を行い、できる限り、日本語や満州語の文法記述と共通するように、品詞分類や接続の説明などに注意を払った。同時に、モンゴル語や満州語の文法現象を考慮することによって、日本語の文法についても、品詞分類や文法定義など、修正すべき点、新たな視点による再分類の必要性があると気づき、日本語文法の再検討も始めている。その過程の中で、山田孝雄の提唱しているいわゆる「山田文法」の品詞分類は、もう少し評価を受けても良いのではないかという感想を持っている。 これらの文法の体系的記述は、まとまりがない状況であるが、恐らく、この混沌とした作業を継続してゆき、分析や知識が飽和状態に到れば、ある時期に一気に新しい文法体系が結晶して現れてくるだろうと、期待している。 チャハル方言の調査については、モンゴル語の文法の研究には大きな働きを果たすことが無さそうであると結論がでて、今は方言調査は行っていない。 また、『元朝秘史』をはじめとする歴史的文献の読解については、時間の関係で、あまり進んでいないが、歴史的な文法の変化は、必須の知識であるので、次年度も継続して検討してゆく予定である。
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