本研究は、従来、個別的・場当たり的な対応しかされてこなかった、国語学・日本語学の用語の英訳の問題に体系的に取り組もうとする試みである。 当面の題材として、雑誌『国語学』の要旨(日本語・英語)を選び、テキスト・データベースを作成した。まず、『国語学』第50集から第208集までの英文要旨を電子テキスト化し、XML形式のファイルとして整形した。さらに、166集以降について日本語要旨と英語、日本語のキーワード(著者が付けたもの)を入力し、TeXによって組版、印刷した。また、日英語のキーワードの対訳索引を作成した。また、キーワードに選定されていない語で、要旨の中で説明が加えられている31語についても一覧表を作った。 この作業の過程から、次のことが分かった。質的・量的な充実、あるいは分野の広さという点で『国語学』の要旨をデータベースとすることは目的にとってふさわしい対象であると思われる。ただし著者の付けるキーワードは必ずしも組織化されておらず、当該分野の基本概念の抽出の手段としてはふさわしくない。むしろ、英文要旨そのものを検索対象として利用した方が有用である。また訳語だけでなく、日本語の用語をローマ字表記する場合にもいくつかの可能性があり、揺れが見られることが明らかとなった。表記法は研究の目的に応じて何通りかあってよいが、目的に応じた表記の指針を与えることは可能であろう。 今後は、日本語要旨との対照をさらに進め、訳語、英文による説明等を抽出し、検索可能な形で整理していく予定である。また現在および将来にわたって、作成したデータはインターネット上で公開していく。
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