1)計画のうち、本年度実施したのは次の事項である。(1)12年度にコンピュータ入力した杏雨書屋蔵『伊呂波別動植物名彙』テキストの校正。(2)方言記事の典拠の解明(前年度から継続)。(3)方言記事索引を作成するためのデータの加工および付加情報の添付。(4)小野蘭山への直接的な方言情報提供限の探索。 2)コンピュータヘのテキスト入力は前年度に終えているが、典拠を有する記事が判明するにつれて、原本の誤読箇所のあることが判明したり、原著者である蘭山自身の誤った引用のあることが次第に明らかになってきた。その種の記事に関して、適切と思われる校正を施した。 3)方言記事の典拠の解明は、各種の本草書に関してはほぼ完了し、産物帳関連の記事についても相当明らかになってきたが、典拠不明の記事も当数残っている。なお、典拠探索の過程で、出雲国産物帳の新出写本の調査の機会を得、当該資料の言語について検討を加えた。 4)入力済みテキストの校正と並行して、索引作りのためのデータの加工および付加情報をそこに加えることを行ったが、最終的なデータ構造の決定に手間取ったため、完成には至っていない。 5)方言記事のうち、典拠不明のものの中には、全国に存在する蘭山門弟からの直接の情報提供が行われた可能性が存するが、その一例として、仙台藩涌谷で薬種業を営んでいた人物の著作の調査を行った。 6)2年度に及ぶ本研究により、小野蘭山がどのような文献資料を利用して『伊呂波別動植物名彙』の方言記事を書き残したかという疑問は、ほぼ解決の見通しが得られることになった。
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