(1)中期一条兼良古典学の学的結実として、『古今集釈義』の校本作成を企図し、学界未紹介資料である東山御文庫蔵『古今集釈義』を底本として、京都大学附属図書館中院文庫蔵本・神宮文庫蔵本・彰考館蔵本との校異を掲げた。これは、平成10・11年度科学研究費補助金〔基盤研究(C)(2)〕による研究「室町後期に成立した古今集古注釈書の書誌的研究」の研究成果をも含むものである。 →『研究と資料』第43輯(2000/7) →拙著『一条兼良の書誌的研究 増訂版』(おうふう、2000/11/25)再録 (2)初期一条兼良古典学の代表的著作であり、かつ、兼良の処女作と目される『公事根源』の伝本の悉皆調査を企図し、本年度は、下記の文庫・図書館に所蔵される伝本を調査し、可能な限り紙焼本を作成した。 宮内庁書陵部・内閣文庫・静嘉堂文庫・尊経閣文庫・名古屋市蓬左文庫・旧東京教育大学附属図書館(調査済資料)・熊本大学附属図書館寄託北岡文庫蔵本(国文学研究資料館蔵マイクロフィルムによる調査)・上田市立図書館藤廬文庫蔵本(同前)・臼杵市立図書館蔵本(同前)・京都大学蔵本(各部局)・陽明文庫蔵本・天理図書館蔵本(3月調査予定) (3)上記諸伝本の内、紙焼本による調査が大略完了した諸本に関しては、書誌データを公表し、併せて系統分類のための若干の私見を示した。 →『研究と資料』第44輯(2000/12) (4)本文の比較・検討により、活字化の際の底本を選択すべく、対校中である。 →現在までの予備的検討によれば、蓬左文庫本または宮内庁書陵部蔵室町末期写本のいづれかを底本とするのが妥当だろうと考えられる。
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