1 『風雅和歌集』の文献学的研究『風雅和歌集』の伝本の調査研究においては、すでに平成12年度に、京都女子大学附属図書館蔵谷山茂旧蔵本を分析し、他本と比較検討することによって、京都女子大学蔵本が、現存する『風雅和歌集』伝本中の最善本であることをつきとめたが、今年度は同本の本文をすべてデータ入力し、テキストファイルとして整えた。これによって同本を底本として校本を作成する準備が出来上がった。そのほか、京都大学文学部図書室蔵本(勅撰九代和歌集の内)、岡山大学附属図書館蔵池田文庫本(2冊)、九州大学附属図書館蔵細川文庫本などの調査研究を行った。これらの調査研究の進展によって、従来漠然となされていた、『風雅和歌集』の諸本の分類の仕方に、かなり問題があることが判明した。また、従来比較的重視されてきた、宮内庁書陵部蔵吉田兼右本の本文が、かなり校訂が加えられたものであることも判明しつつある。ただしまた、京都女子大学蔵本にも校訂の後は窺われるのであって、『風雅和歌集』の本文を考える際には、個々に比較検討することが不可欠であると理解されるに至った。 2 『風雅和歌集』の注釈学的研究『風雅和歌集』所収歌について、一首一首分析を加えて、解釈を推し進めた。これまでに四季(春・夏・秋・冬)を中心に400首ほど、また雑部100首ほどの注釈的研究を行った。発見した解釈的事実は多岐にわたるので、今後公刊する『風雅和歌集』の全注釈において報告することになる。ごく一例を述べれば、とくに雑部の配列において、かなり『風雅和歌集』独自の和歌史認識、および歌人意識が見られることが判明した。
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