研究概要 |
昨年から引き続いている『花襷厳柳嶋』(元文4年(1739)刊)と『仮名手本忠臣蔵』(寛延元年(1748)初演)及びそれに先行する浮世草子・浄瑠璃作品についての検討はほぼ一段落した。忠臣蔵の加古川本蔵の造型及び役割は『花襷厳柳嶋』の高瀬与茂平をモデルにしていると考えられるというあたりがその要点であり、いずれ論文として発表する予定である。また、この調査の過程で収集した忠臣蔵関係の文献を利用して、来年度後期の学部特殊講義において忠臣蔵について論ずる予定になっている。 また、ここ5年ほど、私は米国議会図書館古典籍目録(ワシントンD.C)の編纂に従事しているが、調査の過程で『都鳥妻恋笛』(享保19年(1734)刊)の改題本『梅若一代記図絵』,がこの図書館に蔵されていることを発見した。この書はこれまで報告されたことのない新出の改題本であり、これを含めた同館所蔵の浮世草子・読本作品について今年度精査する予定にしていた。冬期休暇中に調査旅行を予定しておりそのための外国旅費も計上していたが、2003年3月末にニューヨークで開催されるアジア学会で急遽この件について発表することが決まり、調査はその折にあわせて行なうことになった。ただ年度をまたぐ旅行になるため当初計上していた旅費をあてることができなくなったため、この分は来年度に予定していたコンピュータとその周辺機器の購入にあてることにした。当初の予定を大きく変更したのはこの点である。 この他、昨年に引き続き『勧進能舞台桜』(延享三年刊)巻三及び『龍都俵系図』(元文五年刊)巻四の注釈を公にし、これに加えて『風流宇治頼政』の注釈もはじまった。 来年度は、本研究とりまとめの年度であるが、現在予定している報告書の内容は、 1.『都鳥妻恋笛』の注釈と研究 2.『勧進能舞台桜』『龍都俵系図』『風流宇治頼政』の注釈と解題 3.『花檸厳柳嶋』と『仮名手本忠臣蔵』の関係に関する研究 というようなところで、すでにまとめの段階に入っている。
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