本年度の研究成果は下記の通りである。 1、かつて、女訓書としての側面を持つ作品として、その特性を指摘した(論文名:「よみものとしての『源平盛衰記』」、『平家物語研究と批評』所収、1996年、有精堂)『源平盛衰記』を取り上げ、その本文および校異、『平家物語』諸本間での記事対照表を作成するとともに、共著者である南山大学教授美濃部重克氏による頭注および補注とをあわせ、三弥井書店より、シリーズ「中世の文学」の一冊、『源平盛衰記(六)』として上梓した。 2、平成14年度、三弥井書店より刊行予定の『女訓書集成』に関して、以下を実施した。 (1)大阪女子大本『女訓抄』を底本として、本文の翻刻、諸本との校合、校異の作成、および内容理解のための諸作業(振り漢字、段落分け等)。 (2)大阪女子大本『女訓抄』所収の諸説話の典拠あるいは類話を調査し、その影響関係をふまえた上での一覧表の作成。 (3)天理本『女訓抄』と大阪女子大本『女訓抄』とを内容面から比較対照し、そこに、中世初期から後期に至る過程での女訓書の変化を確認するとともに、そうした変化をもたらす外的要因に関する考察。 3、中古から近代初期に至る女性教育に関わる資料、および、研究論文等をもとに、その歴史的変遷をふまえた上での、問題点の所在とその整理、今後の課題の検討。
|