本年度は、次のような調査研究を実施した。 (1)洛東遺芳館所蔵和漢書の蔵書印・所持人署名の調査と写真撮影 (2)洛東遺芳館所蔵柏原正寿尼・柏原慶章詠草の整理 (3)絡東遺芳館所蔵書簡の執筆年次推定 (4)洛東遺芳館所蔵香川景樹書簡の翻字、パソコン入力 (1)は、和漢書がどのような経路で柏原家に入ったか、また柏原家の誰がどのような書籍を所持したかを知るための調査で、現在継続中である。「柏原店」と書かれた絵本、節用集、地図などがあり、柏原家のみならず奉公人たちの娯楽・教養の一端がわずかながら窺われる。 (2)は、新出の資料である。柏原里代(正寿尼)、柏原延子(同)、柏原慶章の詠草数百点に、伴蕎蹊、香川景樹、小川布淑などの点や評言、奥書が施されている。柏原家の文事の実態を解明する上で欠かせない資料と判断し、新たに整理番号を付け、内容を摘記したデータベースを作成している。 3)は、仏光寺にかかわる書簡の年次推定のための、仏光寺所蔵『御日記』の調査である。本年は、文化五年分を調査した。柏原家に香川景樹を紹介した恵岳の動向が次第に明らかになってきた。 (4)は、翻字した書簡を、補助者に依頼して入力している。
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