本年度は、次のような調査研究を実施した。 (1)洛東遺芳館所蔵柏原慶章詠草の整理。 (2)本山佛光寺所蔵『御日記』の調査。 (3)洛東遺芳館所蔵和漢書仮目録および文政十二年目録など旧目録の比較対照。 (4)洛東遺芳館所蔵香川景樹点詠草の調査。 (1)(2)は、京都市に出張しておこなった。(1)の慶章詠草は昨年新出の資料で、伴蒿蹊、小川布淑、香川景樹等の添削の跡、書き入れなどがある。これらに番号を付け整理した。現在も継続中である。(2)は、柏原家との交渉が密であった伴蒿蹊、香川景樹がともに佛光寺に出入りしていたこと、香川景樹と柏原家とを仲介したのが佛光寺の僧恵岳であったことから、柏原家の文事、学問が佛光寺と何らかの関係を有していたのではないかとの推測に基づいて実施し、現在継続中である。 (3)(4)は、資料の写真に基づき、主に研究者居住地(鳥取)において実施している。(3)は当初から計画していた蔵書目録作成および旧目録類整理作業の一環である。蔵書形成の大まかな筋道は浮かび上がってきたが、「書物」「蔵書」の概念が旧目録類作成時と現在とでは異なっていること等、種々の問題があって、最終的なまとめまで至っていない。(4)は、香川景樹の指導ぶりを考察するため、景樹点正寿尼詠草の年代を明らかにしようとするものである。添削後の詠草から、点の付いた歌を転記した冊子を主な資料としている。 このほか、小澤蘆庵、加藤千蔭などの手紙の執筆年次の推定のため、柏屋の永代帳などの調査も実施した。また、蔵書形成過程の考察のため蔵書印を撮影した。これらは現在継続中である。
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