平成13年度の前期は、分担者と協力者(いわき明星大学非常勤講師伊倉史人・慶應義塾大学非常勤講師山本令子)4人揃ってほぼ隔週で計6回にわたり、宮内庁書陵部において素性不明な古今集注の調査を行い、また赴かない週には、斯道文庫に集合して、前週に調査した古今集注の検討会を開いたり、国文学研究資料館においてマイクロフィルムの調査をして、データの迫加を行った。夏休み中には、延べ1週間に亘って参加者全員が斯道文庫に集まり、データベース完成に向け、データの形式の統一を図りつつ、最終的な系統の分類作業を集中的に行った。後期は、科学研究費の報告書ともなる「古今集注釈書伝本目録(試作版)」を作成するために、データベースのデータを適切な形に加工する作業を行いながら、最終的な確認作業を継続的に行った。それらの作業の過程で調査の為の紙焼写真を購入した他、未調査の伝本を求めて大阪天満宮や堺市立図書館への出張も行った。こうした継続的かつ集中的な調査と作業により、素性が明らかになった伝本の数が飛躍的に増え、その成果の一部は協力者(伊倉史人)によって学会発表もなされている。また、素性が明らかにならなかったものについても、加注の部分や形式、およその成立年代等の分類整理を行った。最終的に蓄積されたデータ件数は約1400件に達し、伝本目録の試作版も研究報告書として刊行することができた。この報告書は、古今集注釈書自体の研究のみならず、関連分野の研究の進展に多大な寄与をなすものと考える。また今後も、東山御文庫本を中心とする未調査伝本のデータ追加を行いつつ、報告書の公開によって寄せられる訂正や追加の情報を付加して、目録の完成版の作成と、斯道文庫のホームページ上でのデータベース公開を完遂させたいと考える。
|