研究概要 |
本年度が最終年度にあたる年だったので、予約出版に関する調査研究を継続しながら、総括として収集した資料の整理と校訂を行う一方、明治初期の新聞と出版流通をめぐる雑誌特集を企画し、世に問うことにした(岩波書店『文学』特集「新聞小説の東西 --近代のるつぼ」、2003年1,2月号)。 昨年度に引き続き明治初期の日本および海外(アメリカ・フランス)の新聞と図書と公文書を調査し、予約出版とそれに到達するまでの維新期出版史の過程を検証した。国内の予約出版書目の原本点検を続けながら、昨年度その一部の翻字校訂と分析を終えた国立公文書館所蔵『自明治九年至同十六年/雑書綴込 刊本ニ係』(一冊、未整理)の研究を続行した(その成果としての論文を目下執筆中、来年度発表の予定)。該史料は、明治9年から16年にかけて、日本政府が出資して東京の出版社数軒に下命出版させた図書について、太政官各部局の間に交わされた文書を、年代順に綴じ合わせたものである。二の史料に含まれたいる『米欧回覧実記』関連史料から、実記が初版においては政府刊行物であり、再刊の段階では版元に払い下げられ、予約出版として再出発した模様を突き止めることができた。今年度は、その全体の校訂と分析をほぼ終えることができた。なお、総括として、下記の5項目にわたる資料集を作成し、このプロジェクト全体の成果報告として提出するための作業を完了した。 (1)明治4年官版『法普戦争誌略』にみる新聞等活字メディア関連記事 (2)国立公文書館所蔵『自明治九年至同十六年/雑書綴込』所収未紹介史料(抄出) (3)東京・博聞社出版物等関連新聞記事 (4)東京・自由出版会社他予約出版関連年表 (5)明治初期出版メディア関連資料
|