研究課題/領域番号 |
12610465
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
刈間 文俊 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (00161258)
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研究分担者 |
楊 凱栄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00248543)
代田 智明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60154382)
若林 正丈 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60114716)
ラマール クリスティーン 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (30240394)
村田 雄二郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (70190923)
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キーワード | 国語運動 / 音声言語 / 漢字 / 言語干渉 / 近代国民国家 / 白話 / 言語政策 / 本質主義的概念 |
研究概要 |
各分担領域においで、本年度得られた新たな知見: 1)中国の清朝雍正年間に福建省の諸県に創設された「正音書院」の時代的意味を検討した。音声言語に正統性を認めたり、音声を均質化しようとする試みが、必ずしも近代特に20世紀以降固有の動きではないことが明らかになった。ただし、この事例が限定された一地方での試みであったことには十分注意しておかなければならない。 2)中国語の動作の進行を表す"在VP"構文が、北京固有の語法の中にはなく、近代に入って南方方言から「感染」したものと考えられるように、"V+在+(場所)"構文も呉語からの「感染」を想定しうる。ただし、19世紀以前に、北方官話にそうした用例がまったくなかったとも断言できない。 3)オーラルヒストリーが個人から痛みとともに紡ぎだされる時、話し手に一種の癒しをもたらす場合がある。聞き手がその中から「声なき声」を困難と痛みとともに聞き取る中で、ある種の癒しがもたらされることもある。個人の記憶と公的な記録とそれぞれの記述との間には階層性と視点の違いがあり、そのことは、結局のところ、書記システムを支配する者こそが権力システムを支配する者であることを浮き彫りにする。ただし、漢字が漢字固有の権力性を発揮していると言うのはなかなか難しい。 総括:「近代」固有あるいは漢字固有のポリティックスを厳密な境界線を引いて言うには無理があるで、「漢字文化圏」という概念が有効かどうかを検証するためには、それぞれの地域において、考察対象の範囲を広げて、(1)近代以前を含めた段階的でファジーな過程を記述する(2)背景となった社会制度特に教育制度や政治制度の変遷を同時平行的に分析するといった、より柔軟で広範囲の領域を視野に入れた枠組みを採用する必要性が感じられた。
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