先に提出した13年度の計画書に基づき、本年度に12年度に終了できず、本年度に持ち越された引用説文のカード化の作業を引き続き行った。その結果、『史記』諸注、『五経文字』、『九経字様』、郭忠恕『汗簡』のカード化が終了した。まだカード化の作業を終了できなかった文献もあるが、12年、13年度と収集整理したカードに基づき、説文の文字番号ごとにデータを入力して「引用説文データリスト」を作成した。このリストによって引用説文の情報が効率よく得られることになる。これは研究成果報告書に資料篇として附載してある。 この「引用説文データリスト」の『藝文類聚』『初学記』『北堂書鈔』『太平御覧』のデータに基づき、所謂「類書」とよばれるジャンルの書物ではどうように説文が引用され、その引用する説文は果たして現行説文、即ち所謂「大徐本」と同じであるかという問題について考察した。その結果、類書では『説文解字』を字義の規範として用い、文字の類別の基本資料として引用していることが明らかとなり、また、その引用する説文は半数以上が現行説文と異なり、大徐本以前の説文の姿を知る上で、貴重な資料であることが判明した。 更に、類書間で大徐本とは異なる同一引用説文が見られていることから、類書間の継承関係が見えてきたことも重要な成果といえる。この詳細については「類書に引用された説文について-『藝文類聚』を中心に-」(『お茶の水女子大学中国文学会報』第21号、2002年4月(刊行予定)に記述した(また、これは報告書の研究篇の第三章として載せてある)。
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