昨年は、国内と上海、およびベルリンで資料調査を行なった。研究第二年度の今年は、中国浙江省金華でエーバーハルトの助手を務めた曹松葉について調べ、また昔話の聞き取り調査を行って、エーバーハルトの『中国昔話のタイプ』の基礎資料となった金華地域の昔話の現在の伝承状況を調べた。曹松葉については、今まで生没年すらわかっていなかったが、今回、金華文聯の黄子奇氏の尽力で曹松葉の晩年の世話をした末娘の曹桂環氏を探していただき、履歴を知ることができた。魯迅と同時期に厦門の集美学校で教員をしていたこともわかり、当時の広い意味での新文化運動に身を置いた新進の研究者、教育者であったことがわかった。 金華での昔話の調査は五日間だけであったが、伝説、笑話、本格昔話などさまざまな話を七十話あまり聞けた。浙江省のちょうど中央に位置する金華は、昔から交通の要衝で、さまざまな文化が流入してきた昔話の豊富な場所であることも確認できた。 金華の調査について、10月28日、法政大学で開かれた中国民話の会研究例会で報告した。さらに金華で聞いた話に日本語訳をつけて整理し、『金華曹宅鎮昔話集』(稿本)として印刷し、中国及び日本その他の昔話研究者に資料として提供した。
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