本年度は合わせて5回の研究会を持ち、『楽府雑録』と『羯鼓録』の読み合わせを行った。両書いずれも訳注の下稿がほぼ出来上がり、『楽府雑録』については、中が引き続き天理大学国際文化学部の紀要である『中国文化研究』への掲載を行う一方、『羯鼓録』とともに13年度中に訳注として完成させ、研究報告書の形で一括して公表する予定である。また大学院生に基礎的な調査・整理を委託した唐代音楽の関係文献目録についても、その一次稿が出来、13年度中にそのうちの主要なものに解題を付して完成させ、公表したいと考えている。 国内の資料調査は、中が8月に内閣文庫等に出張して関係文献の調査にあたった他、斎藤も内閣文庫所蔵の『教訓抄』『楽書要録』等、必要な文献の複写、収集に努めた。また斎藤は、10月に中国の武漢大学で開催された第10回唐代文学国際研討会に参加して、「唐代音楽文献研究叙説」の題で研究発表を行った。この発表では『楽府雑録』や『羯鼓録』に止まらず、唐代音楽文化の研究に関わる幾つかの問題点を合わせて取り上げた。これは唐代文学学会が刊行する論集に掲載の予定である。なお以前より交流のある揚州大学の王小盾氏は、所用のためこの研討会に参加されなかったが、同様に唐代音楽文化に関する研究を進める数名の学者と意見交換をすることができた。また王小盾氏とは、郵便によって成果や意見の交換を行っている。 総じて、ほぼ当初の予定に見合う形で研究が進められたと考える。
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