本研究では、唐代音楽の基礎的文献である『羯鼓録』(南卓著)と『樂府雜録』(段安節著)とを主たる対象とし、それぞれの詳細な訳注を作成して、研究成果報告書の形で取り纏めた。『樂府雜録』の訳注については、天理大学の『中国文化研究』誌上でも逐次連載中である。また齋藤は平成12年秋に中国の武漢大学で開催された唐代文学国際学会において、唐代音楽文献の研究における問題点などを取り上げた、「唐代音楽文化研究叙説」という題の報告を行った。これはいずれ同学会の論文集に収載される予定である。なお、唐代音楽の関係文献目録の作成を行い、その中の主要文献に解題を施して公表することも予定していたが、両書の訳注の作成を優先させた関係で、時間内に完成することができなかった。これについては引き続き努力して、今後の公表を期することとしたい。 2年間にわたる研究を通じて、従来ほとんど取り上げられてこなかった両書の内容を詳細に検討し、唐代音楽の文献的な研究の方向付けを行ったことは、唐代音楽文化の研究において一定の貢献をなし得たと考える。今後さらに研究対象を広げてゆく上でも、貴重な足がかりとなった。特に『碧〓漫志』などの宋代の文献の重要性も再認識されたので、引き続いてこれらの文献の検討を行ってゆく考えである。また『教訓抄』など、日本の雅楽に関する文献の研究も視野に収める必要があり、将来的には雅楽の研究者との共同研究も考えてゆきたい。
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