研究作業の経過報告 『古小説鈎沈』の主要源である唐宋類書からのデータ整理;『芸文類聚』『初学記』及び『太平広記』の資料としての整理は基本的に完了した。 資料の分析・校訂・校勘;『古小説鈎沈』所収の各小説の信頼できる本文の提供、つまり定本の作成が本研究の主目的であるが、志怪のうち『列異伝』『述異記』『斉諧記』等については、すでに説話一条毎の本文校訂、前後継承関係、類話の分布などの調査を終え、原稿の作成を完了した。その結果いくつかの小説については佚文を新たに発見することができた。『幽明録』についても同様の作業に着手した。と同時に完成した原稿をパソコンに打ち込む作業にも着手した。副産物として梁の任炳撰『述異記』の整理を完了、その考証と校本を完成させた。これは京都大学人文科学研究所『東方学報』2000年度に発表の予定。 資料の収集;『太平御覧』は六朝古小説の最も豊富な宝庫であるが、宋刊本をはじめ魯迅が使用した清の鮑氏刊本等がある。今回すでに稀覯となった明の倪氏刊本を入手することができた。無論宋刊ほどの重要性はないけれども、宋刊から『古小説鈎沈』の直接の取材源となった鮑氏刊本までの流伝の過程がある程度明らかにできるのではないかと期待される。
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