研究概要 |
本年度は『古小説鉤沈』志怪部分のうち,前年度までに仕残した『冥祥記』を初めとする,主に仏教関係,また『漢武故事』『玄中記』など道教思想の範疇にはいる志怪についての本文の校訂を終了し,『古小説鉤沈』校本(志怪部分)を完成させた。本年度作業の内容は,『御覧』『広記』等一般類書はむろんのこと,『法苑珠林』(大正新修大蔵本,四部叢刊本),また日本にのみ残存する『釈氏六帖』即ち『義楚六帖』等の仏教関係書を精査することで,魯迅原輯の本文に相当量の補訂を加え,また各小説について若干数の佚文を補った。また道教的小説では,殊に『漢武故事』について,魯迅の逸した資料『明鈔説郛』また日本残存の『天地瑞祥志』等によってかなり大幅な改訂増補を加えることができた。更に電脳化された『四庫全書』の活用によって,前年度までにすでに校訂を終えていた部分についても再調査し,若干の補訂を加えることができた。かくして『古小説鉤沈』(志怪部分)については,学界に対して従前よりはより確定的なテキストを提供することができたと考える。
|