研究概要 |
『古小説鉤沈』校本(志怪部分)の完成を目指した本研究は,予定通り魯迅原輯の各小説の本文を『北堂書鈔』『芸文類聚』『初学記』『法苑珠林』『太平御覧』『太平広記』等唐宋の類書を初めとする各種雑多な資料と対照し,洗い直すことによって,ほぼ所期の目的を達成した。三年度に渉る作業によって,魯迅が定本とするに至らなかった『古小説鉤沈』所輯の志怪部分の全文を,収録もとの原典にあたり,できる限りの善本をもとに再吟味,再調査をするとともに,彼が逸した資料を広範囲に読査して,より確実な本文を確定することができ,若干の佚文を増補することができたと考える.校訂に用いた書は唐宋を主とし,明初に及ぶ。関連貸料は清代,現代のものまで記録したが,特別な例を除いて校訂には用いていない。本研究が逸した貸料も若干はあるかと思うが,本文確定に決定的な影響を与えるものはほとんどなく,その数も決して多くはないであろう。この『古小説鉤沈』校本(志怪部分)は六朝期小説研究に対してより確実な基礎的資料を提供することができると考える。なお予定した『談薮』『続斉諧記』等『古小説鉤沈』続編ともいうべき部分についても基本的な校訂作業は終了しているが,印刷には及ばなかった。後の作業を俟ちたいと思う。
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