研究概要 |
14世紀に北ヨーロッパの修道会・ベギン会に現れた女性神秘思想家の著作はイギリス・東アングリア地方の神秘主義文学に大きな影響を与えた。Gertrude of Helfta, St Bridget of Sweden, Mary of Oignies等は神秘的経験を口述写本に残したが、The Book of Margery Kempe(以下、The Book)も女性神秘家の思想と文学の影響を受けいる。 本研究ではThe Bookの中心であるキリストの生誕、受難、霊的婚姻の黙想にSt BridgetのLiber Celestisが与えた影響を実証的に検討するため、The Oxford Lincoln College MS Lat 69/75の研究を行う。 MargeryとBridgetの神秘的経験に表れたイメージは観想修道会で形成、継承された神秘主義文学、図像学のコンテクストと連動している。特に、キリストの生誕、受難に関して、Margery,Bridget共にMeditationes vitae Christiの影響を受けている。さらに、Margeryの場合、BridgetのLiber Celestisを通してMeditationesが受容されているため、Margeryの黙想はMS Lat69/75に見られるであろうMeditationesの影響をふまえ複眼的に考察する必要がある。 本年度はThe Book, Liber Celestis, Meditationesの比較研究を行った。研究内容は'The Book of Margery Kempe : A Study of the Meditations in the Context of Late Medieval Devotional Literature, Liturgy, and Iconography', (doctoral thesis, University of Exeter,2001),(審査中)の中でまとめた。
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