動作可能な部分から構成される物体の形態変化を一般的に記述するための枠組みとして、様相論理の導入を提案した。この手法がもし正しければ、行為の言語化による認知つまり言語化は、運動部位と全体運動を座標上の移動の問題ではなく、部位相互の相対的な移動、しかも完全に離散的な認知が関与していることを窺わせることになる。このように、本研究は運動体に対する人間の認知能力解明のためのひとつの接近法である。同時に、えられた様相命題集合列は当該行為を表す動詞の意味記述にも利用可能であり、自然言語の意味理論にも大きく寄与できると期待される。さらには、動詞による命令によって当該行為をスケルトンに実行させるという、手順を逆に辿る研究の可能性もみえてくる。これらが次年度以降の研究の中核となる。なお、本研究は2001年9月に開催されたチェコ・科学アカデミー主催「動的論理国際コロキューム:意味は動的か」において発表され、ヴァン・ベンサム教授(スタンフォード大/アムステルダム大)、ハンス・カンプ(シュツットガルト大)教授などからその独創性を高く評価された。
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