本研究では、前研究で得られたワイヤー・フレームに基づく行為動詞の意味記述アルゴリズムが様相論理学によって動的に再構築できることを示した。手法としては、ワイヤー・フレームによって記述された個別の動作トークンを論理表示することで、その動作トークンならびに類似のトークンに共通する論理式を得た。具体的には以下の通りである。 1.各々の回転軸を世界としてみなし、その軸上の運動をその世界内の運動命題として表した。 2.回転の依存性を世界間の接近可能性として表した。 3.各運動点の相対的回転を表す回転式をモデルとして、そのモデル上で上記の様相命題を評価した。 本研究は国際ロジック・コロキュームにおいて、論理の適用方法と意味記述の手法の両面から高く評価された。この意味で、本研究は自然言語意味論研究に新しい一歩を加える接近法であると思われる。さらに、統語論、談話文法においても以下の調査・研究を行った。 4.統語論において主辞駆動文法と極小理論の形式的基盤の比較を行ったが、両者の記述力の得失の判断は、具体的にどのような文法を構築するかに大きく依存するようである。 5.談話における代名詞の先行詞決定問題をセンタリングモデルの枠組みで吟味した。文内での先行詞探索法を談話内探索でもより重視しなければならないことが判明した。
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