1750-1850年(Long Eighteenth Century)の英国における「地理的他者」・「異国」の表象について、ロマン主義の時代を中心に、学際的な研究を行った。18世紀半ばから19世紀半ばまでの一世紀は、ヨーロッパが、時間的・空間的に驚異的な拡大を体験した時代であることを、地質学、比較神話学、考古学等の新たな発見と聖書との関連、ヨーロッパ大陸の彼方の未知の大陸、島々からもたらされる非常に異なる文明、民族の情報と文化人類学との関連から考察し、文学、地理学、自然科学の文献を総合的に分析して、イギリスの「自己」と「他者」像の変化を検証した。 イギリスの「他者」像を考える際、分断された身体、異種混交という今まで論じられていなかった観点から、「他者」を「自己」に取りこむことの困難さについて考察し、William Blakeの"The Tyger"、Mary ShelleyのFrankensteinを中心に19世紀イギリスの「他者」取りこみの失敗を跡付けた。そして、メアリー・シェリーの作品に見られるロマン主義的な統合の夢を実現させているのは、実は元北大教授西村真琴が制作した東洋初のロボット「学天則」であると論じた。これは平成13年6月上旬にクイーンズランド大学で行われる学会で発表の予定である。
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