本研究は、"Long Eighteenth Century"(1750-1850)というヨーロッパロマン主義研究で新たに用いられだした時代区分を発展的に用い、この世紀を、西洋、東洋両方での「他者」との遭遇の世紀と位置付け、洋の東西で「他者」・「異人」・「外国」というものとの出会いが、複数の真理を生んでいく過程を明らかにするものである。 本年度は、前年度の研究に引き続き、1750-1850年(Long Eighteenth Century)の英国における「地理的他者」・「異国」の表象について、ロマン主義の時代を中心に、学際的な研究を行い、分断された身体、異種混交という今まで論じられていなかった観点から、「他者」を「自己」に取りこむことの困難さについて考察し、6月にクイーンズランド大学で行われた国際学会で成果を発表した。また、異種混交というテーマの一部は、平成14年4月、一橋大学で開かれる国際学会で発表を予定している。後期からは、1750-1850の日本における「異人」、「異国」の表象について学際的な研究にも着手した。江戸中期-後期という、鎖国下の江戸という外国との自由な通交が最も制限されていた時期にいかに大量に西洋の情報が流入していたか、江戸の想像力が生み出す「幻想の西洋」が日本の自己成型に与えた影響を検証した。
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