研究概要 |
本研究は、"Long Eighteenth Century"(1750-1850)というヨーロッパロマン主義研究で新たに使われ出した時代区分を発展的に用い、18世紀から19世紀前半を、西洋,東洋両方における「他者」との遭遇の世紀と位置付け、「外国」、「異人」というものを受容していくプロセスを「エキゾティシズム」、つまり異国の商品の受容、のプロセスと連関させて、洋の東西で比較検討するものである。初年度はヨーロッパが時間的・空間的に飛躍的に拡大したこの世紀におけるイギリスの非西洋的世界との接触に焦点をあて、イギリスの「自己」と「他者」像の関係を主に文学テクストを中心に考察した。二年目は、前年度の研究と比較対照するものとして、同時期の江戸中期-後期における「外国」観を検討し、今年度は比較の観点から研究をまとめた。「鎖国」という江戸幕府の体制の下で日本人の海外渡航が禁じられていた時代にいかに大量の西洋の情報が流入していたかは、最近の日本研究が徐々に明らかにしているが、本研究では、「オランダ渡り」の文物にふれることやオランダ東インド会社の上級職員たちの「参府」の旅を見ることよって江戸時代の知識人、大衆がいかに「外国」を受容していったかを、やはり非西洋に直接行ったことはないがロンドンに流入してくる世界各地の商品、首都で目撃される肌や髪の色の違う外国人を見ることで「異国」のイメージを形成していったイギリスの文学者たちの「エキゾティシズム」のプロセスの類似点、相違点を明らかにした。
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